京都府宮津出身の写真師・大橋申廣氏の没後100周年記念シンポジウムおよび展示会の開催概要

令和7年5月27日
2025年5月23日、在セーシェル日本国大使館は、セーシェル大学、セーシェル国立文化・遺産・芸術機構、宮津市の協力のもと、京都府宮津出身の写真師・大橋申廣氏のセーシェル没後100周年を記念し、セーシェル大学においてシンポジウムを開催しました。

大橋申廣氏は、今から120年ほど前にセーシェルで活躍していた京都府宮津市出身の写真師で、首都・ビクトリアの街並みや港、官公庁、人々の生活、ゾウガメ、セーシェル特有の植物など、セーシェルの歴史を見事に写し出した写真絵はがきを多数製作し、1925年5月23日にセーシェルで74歳の生涯を閉じました。これらの写真絵はがきは、セーシェル史の貴重な歴史的な史料として、セーシェルの人々に大きな影響を与えてきました。

大橋氏に関する研究は、日本では元中部大学教授の青木澄夫氏が30年間にわたって尽力してきました。最近では、青木澄夫氏は、2023年2月にセーシェル国立歴史博物館に自身が所蔵する大橋氏の写真絵はがき(1900年代~1910年代に販売された66枚)を寄贈しました。同氏に加え、最近では、松田法子京都府立大学准教授も、青木澄夫氏の研究成果を元に研究を進めており、2019年末から2020年始めにかけてセーシェルで行った大橋氏の写真絵はがきに関する調査や青木澄夫氏へのインタビューおよびセーシェルでの調査内容を含む動画制作・公開を行ったほか、2022年11月に宮津市で大橋申廣氏に関するシンポジウムと、青木澄夫氏がセーシェルに寄贈される直前の大橋氏製作の写真絵はがき73枚(セーシェルに寄贈した写真絵はがきと重複する7枚は宮津市に寄贈)を活用した展示会を開催しました。

5月23日にセーシェル大学で行われたシンポジウムでは、作田大使が冒頭挨拶において、長年にわたって大橋氏の研究を行ってきた青木澄夫氏への謝意を述べた後、大橋氏が日本・セーシェル間の二国間関係において、人的交流や友好親善を育んだ人物として重要である点や、日本・セーシェル間の交流は、今は1980年代ほど活発ではないかもしれないが、昨年12月から日本がセーシェルで初の特命全権大使を駐在させていることからしても、日本・セーシェル関係の重要性は益々高まっている点を述べました。

その後、ジャスティン・ゼリム・セーシェル大学芸術・社会開発学部長がセーシェルにおける大橋氏の歴史的意義を述べた後、城﨑雅文宮津市長(オンライン出席)がシンポジウム開催への謝辞に加え、「天橋立」を有する観光地としての宮津市の紹介を述べた上で、大橋氏の業績は誇るべき足跡であり、大橋氏の写真は単なる芸術表現を超えて、人類の記憶の一部として、我々に多くのことを語ってくれると述べました。

シンポジウムに登壇した松田法子京都府立大学准教授(オンライン出席)からは、青木澄夫氏の研究成果や前述の自身の研究成果、宮津市の20世紀前期の写真絵はがきからみる宮津市の魅力や宮津市とセーシェルとの地形・景観や写真絵はがき製作史における共通点、大橋申廣研究に対する今後の展望等が述べられました。

セーシェル側からは、民間人研究家でジャーナリストのパット・マチョット氏が、兄弟のセーシェル人歴史家・故トニー・マチョット氏(2024年1月逝去)から引き継ぎ、バーナード・シャムライ元教育大臣・元文化兼社会開発大臣・元駐仏セーシェル大使とともに行っている大橋氏に関する調査の経過報告を行いました。パット・マチョット氏は、大橋氏の遺品目録の分析から、大橋氏の写真業および石鹸業の営みに関する考察を述べたほか、遺品目録や大橋氏の遺書において、写真師の教え子として親交が深かったとされるセーシェル人写真家・フランソワ・ベル氏や大橋氏の孫が遺産相続受取人として含まれていることを紹介しました。

シンポジウムの最後には、デイビッド・アンドレ・セーシェル国立文化・遺産・芸術機構長が大橋氏の写真絵はがきのセーシェル史における歴史的意義を述べました。また、シンポジウムには、大橋氏について記事を書いたことのあるセーシェル人歴史家・ジュリエン・デューラップ氏および同氏の同僚で大橋氏の写真絵はがきコレクションを所蔵するファビエン・コラス氏も出席しました。今回のシンポジウムは、日本・セーシェル間の深い友好関係の歴史において重要な人物である大橋氏のレガシーを後世に伝えるための大変重要な機会となりました。

シンポジウムの開催にあたり、セーシェル大学の寛大なご支援に心よりお礼申し上げます。とりわけ、同大学クレオール言語・文化研究所所長のペンダ・ショピー博士および国際・国内連携部門上級マネージャーのプレマ・セルヴィナ氏に深く感謝いたします。

さらに、シンポジウムの前日(22日)には、セーシェル国立博物館主催のもと、青木澄夫氏が寄贈した大橋申廣氏の写真絵はがきのバナー展示のオープニング式がセーシェル国立図書館で行われ、作田大使が挨拶の中で青木氏への謝意を述べたとともに、アンドレ・セーシェル国立文化・遺産・芸術機構長は、挨拶の中で、この寄贈は国立博物館の収蔵品に貴重な価値を加えるものであり、パートナーシープの強化を示していると述べました。この展示は、5月30日まで開催されます。






【関連リンク】
 
「宮津市出身の日本人写真師・大橋申廣氏のセーシェル没後100周年記念シンポジウム(100th Anniversary Symposium in Memory of S.S. Ohashi – A Japanese Photographer from Miyazu in Seychelles)」(在セーシェル日本国大使館ウェブページ)(英語)

「宮津市出身の日本人写真師・大橋申廣氏のセーシェル没後100周年記念シンポジウム(100th Anniversary Symposium in Memory of S.S. Ohashi – A Japanese Photographer from Miyazu in Seychelles)」(在セーシェル日本国大使館Facebook) 

「【広報協力】5/23(オンライン)アフリカ・セーシェルで活躍した宮津の写真師 大橋申廣没後100周年記念シンポジウム」(京都地域未来創造センターウェブサイト)

青木澄夫氏からセーシェル国立博物館への大橋申廣絵はがき引渡式(2023年2月、在セーシェル日本大使館)

動画「セーシェルの風景に大橋申廣を追って」(2022年、松田法子・京都府立大学准教授制作)